住友林業の「森林ファンド」が目指す未来をゆるっと考えてみた。
住友林業は、森林ファンドを含む国内外の管理森林面積を、
2030年までに100万ヘクタール(ha)まで拡大することを目指しているようです。
これは日本の国土面積の約2.6%に相当する非常に広大な規模であり、
もともとの目標(50万ha)を大きく上方修正した形となっています。
また、他社と共同で組成した第1号ファンドの運用資産総額も、
現在の約600億円規模から2030年には1,000億円規模へ引き上げる計画だと言われています。
今回はこの森林ファンドについて、ゆるーくまとめました。
森林ファンドの「真の目的」とは何なのか?
住友林業が自前の資金だけでなく他人の資金を巻き込んでまで規模を拡大する背景には、
単なる環境貢献を超えた、非常に現実的でシビアなビジネス上の目的があると考えられます。
【「工場を直す」より「木を植える」方が圧倒的にコスパが良い】
石油を精製するプラントや、巨大な貨物船のエンジンを「CO2が全く出ない最先端のもの」に建て替えるには、
天文学的なコストがかかり現実的ではありません。
それに比べれば、
森林ファンドに出資して「木にCO2を吸ってもらう権利(クレジット)」を買う方が、
企業にとっては遥かに安上がりなコストで済むと言われています。
【CO2を出すけど森でプラマイゼロにする免罪符】
企業の本音は、ビジネス構造上どうしても出てしまうCO2を、
住友林業のファンドを通じて海外にめちゃくちゃ木を植えることで相殺(オフセット)することにあるようです。
「会社からCO2が出ても、その分別の場所で地球に貢献しているから帳消しにしてね」
という状態を作るのがベースの考え方だと見られています。
【将来課される「脱炭素の重税(炭素税)」に対する最強の盾】
今後、国が本気で脱炭素へ舵を切り、
「CO2の排出量に応じて税金をかける(炭素税など)」というルールを本格化させた場合、
企業は莫大な増税を突きつけられます。
しかし、
「うちは森林ファンドでこれだけの森林を育てて相殺しています」
という高品質な証明書を国に出せば、
「プラマイゼロなので、その分の税金は免除してください」
と合法的に主張するための防壁として使える仕組みになると想像できます。
企業のキャッシュを「森」に逃がす財務スキーム
実はこの森林ファンド、
ただ税金を防ぐだけでなく、
「しっかり現金としての配当(利回り)も出る」という一石二鳥の金融商品になっているようです。
企業が手元の余剰資金を銀行に眠らせておいたり、
普通に運用して税金を取られたりするくらいなら、
森林ファンドに資金を置いておくことで、
以下のような「節税×配当」のイイトコ取りができるスキームを住友林業は提供しているのではないか、と想像できます。
【木材販売や土地の値上がりによる「安定した配当」】
森林ファンドは、育てた木を住宅建材などとして市場に売却した利益や、
将来的に価値が上がった土地の売却益を、
出資企業に現金でしっかり還元する仕組みのようです。
銀行に預けるよりも遥かにマシな利回りが期待できると見られています。
【税金として「召し上げられる」はずのキャッシュを守る】
そのまま利益を出して会社にキャッシュを置いておくと法人税で削られ、将来は炭素税でもむしり取られます。しかし、資金を森林ファンドに置いておき、分配されるクレジットを費用(損金)化すれば、
法人税を圧縮しつつ炭素税からも会社を守るという強力な二重防御の可能性があると思われます。
【キャッシュを減らさずに「環境先進企業」の看板を買う】
通常、工場のエコ化などはお金を「消費」して終わりですが、森林ファンドは「投資」です。
手元のキャッシュを減らすことなく、
むしろ配当を得ながら、対外的には「最高のESG評価」を手に入れられる仕組みのようです。
どんな企業がこのファンドを買っている(出資している)のか?
この圧倒的な財務上のメリットがあるからこそ、日本を代表する大企業たちがこぞって財布を開いているようです。
第1号ファンドには、ENEOSや日本郵船、大阪ガスといった、
いわゆる排出削減が極めて難しいセクターの代表格が名を連ねています。
彼らにとって自前でゼロから海外の森林を買い、
管理するのはハードルが高すぎるため、住友林業のファンドは
「今のビジネスをそのまま続けるために、手元のキャッシュを賢く配置しておく駆け込み寺」
として機能している模様です。
競合となる「総合商社(丸紅など)」との違い
海外の森林ビジネスにおいては、同じ日本勢として丸紅などの総合商社も古くから巨額の投資を行っています。
【住友林業】
アメリカなど、法制度や市場が成熟した先進国の森を「ファンド化」して企業に買ってもらうアプローチ。
【丸紅】
インドネシアやフィリピンなどの新興国で、自前の資金力を活かして大規模な「直接植林」を行い、クレジット化するアプローチ。
手法や得意エリアに違いはあるものの、
海外進出している多くの日本企業(商船三井など)が、
自前でやる辛さを避けるためにこうした専門企業のインフラやファンドに頼り始めているのが、
現代のグローバルビジネスの縮図と言えそうです。
まとめ
「地球に優しい環境ビジネス」と報じられることが多い森林ファンドですが、
ぶっちゃけた企業側の真の狙いは、
『CO2は出してしまうけれど、植林でプラマイゼロにすれば文句ないでしょ!』
という免罪符を手に入れ、余剰キャッシュを『森』に変えることで重税をシャットアウトし、
裏でガッチリ配当を稼ぎ続けるコストコントロール術であるという側面も見え隠れします。
国が本気で脱炭素のルールを強制し始めたとき、
今からリスクを取って資金を仕込んでいる住友林業や出資大企業だけが、
圧倒的な先行者利益を得る仕組みがすでに完成しつつあるのかもしれません。