ホルムズ海峡に頼る時代は、静かに終わりつつあるのかもしれない
最近の中東情勢を見ていると、どうも「ホルムズ海峡が安定して通れる未来」を前提にするのが難しくなってきている気がする。
封鎖が起きた、起きていないという表面的な話ではなく、もっと構造的な部分で潮目が変わってきているように見える。
機雷が撒かれた時点で、復旧は“数ヶ月単位”になる
ホルムズ海峡に機雷が撒かれた場合、封鎖が解除されたとしても、すぐに元通りになるわけではない。
掃海作業は危険で時間がかかり、戦闘が続いていれば作業開始すらできない。
現実的には、最低でも数ヶ月(90日程度)はまともに通れないと考える方が自然だ。
日本の国家備蓄は約200日分。
もし90日が消えれば、備蓄の半分がなくなる計算になる。
しかも紛争が短期で終わる保証はどこにもない。
中東の争いは、歴史的に見ても数年単位で続くことが多い。
船員が“戻りたがらない”という、人間として当然の現実
ホルムズ海峡の向こう側には、封鎖時に40隻規模の船が閉じ込められることもある。
そこには当然、船員がいる。
彼らが無事に脱出できたとして、再び同じ海域に「行きます」と言うだろうか。
人間の心理として、危険な場所に戻りたくないのは自然な反応だ。
船員が拒否すれば、船は動かない。
海運は“人間が動かす産業”なので、心理的な拒否はそのまま物流の停止につながる。
危険手当と保険料で、ホルムズ経由の石油は“実質的に高い”
危険海域に船員を送り込むには、給料を大幅に上げる必要がある。
さらに戦争保険料も跳ね上がり、船主のリスクプレミアムも加わる。
結果として、ホルムズ海峡を通る石油は“物理的に高い石油”になる。
「通れるかどうか」ではなく、「通ったら高くつく」という構造ができあがってしまう。
世界はすでに“ホルムズ抜き”の方向へ動き始めている
実際、各国は静かにホルムズ依存を減らしている。
中国:中央アジア・ロシアのパイプライン強化
欧州:再エネとLNGへの大転換
インド:ロシア産原油でホルムズ依存を低下
日本:LNG比率上昇、調達先の多角化
さらに、カナダの「トランスマウンテン・パイプライン拡張(TMX)」が完成し、
アルバータ州の原油が太平洋側から直接アジアに出られるようになった。
日本向けの試験輸送もすでに行われている。
これは「ホルムズ海峡を使わない選択肢」が、単なる理論ではなく“現実のルート”として存在し始めたということだ。
日本は“ホルムズを使わない石油調達”と“エネルギー構造の転換”の二本立てへ
こうした状況を淡々と積み上げていくと、日本が進む方向は自然と決まってくる。
● ① ホルムズ海峡を使わない石油調達
北米(米国シェール+カナダTMX)
豪州(LNG)
東南アジア
アフリカ
危険で高い石油より、安定していてリスクの低い供給源を選ぶのは合理的だ。
● ② エネルギーそのものを変える
再生可能エネルギー
原子力の再評価
水素・アンモニア
省エネ技術の強化
「ホルムズ海峡が止まったら困る」構造そのものを減らす方向に進むしかない。
まとめ:ホルムズ海峡は“通れるかどうか”ではなく“使う意味が薄れている”
ホルムズ海峡は、封鎖が解けても“心理的にも経済的にも使いづらい海域”になりつつある。
危険手当や保険料で実質的に高くなり、船員も戻りたがらない。
一方でカナダや北米など、ホルムズを通らない供給源が現実的に増えている。
日本がホルムズ依存を静かに減らしていくのは、自然な流れだと思う。